「運用保守とアドオンの開発ばかりで、この先どこに進めばいいんだろう」
「ERPの経験はあるのに、年収が上がる気がしない」
ERPやSAPの仕事を何年か続けていると、次の一手が気になる時期が来ます。コンサルやPMという道があるのは知っていても、今の自分から何を積めば届くのかは、なかなか見えませんよね。
この記事では、採る側として年収や書類をどう見ていたかを、そのまま書いています。
ERPとは何か、年収の相場や2027年問題は、シリーズの1本目にまとめました。

ERPの経験がまだない方には、入り方を経歴ごとに書いた記事のほうが近い内容です。

| 知りたいこと | 要点 | 詳しい章 |
|---|---|---|
| キャリアの考え方 | 工程(何をするか)、専門(何に詳しいか)、立ち位置(どこで働くか)の3つで動く | 3つの軸 |
| 進める道 | ERPコンサル、PM、スペシャリスト、社内SE、フリーランスの5つ | キャリアパス5つ |
| 年収を上げる順番 | 年収レンジを決める5つの条件のうち、4つは工程と役割の話。年数は1つだけなので、工程と役割を先に動かす | 年収を上げる順番 |
| 資格 | SAP認定は1年ごとの更新制。書類では取得年月と、今も有効かどうかが伝わるように書く | 資格の見られ方 |
| 職務経歴書 | ERP経験者の書類は、役割、年数、製品、工程の順に見ていた | 職務経歴書の書き方 |
- ERPエンジニアのキャリアを動かす3つの軸
- 5つのキャリアパスの違いと、求人で求められやすい経験
- 採る側が年収レンジを決める条件と、それを埋めていく順番
- SAP認定の更新制と、資格欄の書き方
- 職務経歴書で人事がERP経験を見る順番と、転職先・エージェントの選び方
すけさんERPの経験者の職務経歴書を開いたとき、私が最初に探していたのはリーダーやマネジメントの経験でした。経験年数より先に見ていたんです。採る側の目線から、次の道の選び方を書いていきます。
ERPエンジニアのキャリアは工程・専門・立ち位置の3つで考える


キャリアパスと聞くと、コンサルやPMといった職種の名前が先に浮かびますよね。ただ、肩書きが変わるのは最後です。その前に、任される仕事の中身が少しずつ動いています。
ERPエンジニアの場合、動かせるものは3つ。何をするか(工程)、何に詳しいか(専門)、どこで働くか(立ち位置)です。



キャリアパスという言葉、ちょっと大げさに聞こえますよね。私が書類で見ていたのも、肩書きよりその人が何を任されてきたかでした。軸の話は、そこを整理するための物差しくらいに考えてもらえれば十分です。
工程:運用保守・開発から、要件定義・構想へ
ERPの仕事を工程で並べると、次のようになります。下にいくほど上流(プロジェクトの最初のほう)の仕事です。
- 運用保守:使う人からの問い合わせ対応、障害の調査、小さな改修
- 開発:アドオン(標準にない機能の追加開発)の製造とテスト
- 設計:画面や帳票、ほかのシステムとのつなぎ方を決める
- 要件定義・Fit&Gap:お客さんの業務を聞き取り、製品の標準の機能との差を洗い出す
- 構想・企画:どの業務を、どの順番でERPに載せるかを決める
月末の締めや受注の流れを、相手の言葉で聞き取る場面が多くなるんです。
同じ工程の中にも、メンバーかリーダーかという役割の違いがあります。この記事では、役割も工程の軸に含めて考えます。
工程は、今の職場の中でも少しずつ動かせる軸です。どこから手を挙げるかは、年収を上げる順番の章に具体例を並べました。
専門:1つのモジュールから、関連モジュールと業務知識へ
2つ目の軸は、何に詳しいかです。ERPは会計・販売・購買など、業務の領域ごとに機能が分かれています。担当してきた領域が、そのまま専門。
求人票や現場では、FIやSDのような略称をよく見かけます。旧製品のSAP ERPで使われてきた、モジュールの呼び方です。
SAPの今の製品はS/4HANAです。SAPの公式サイトでは、経理・財務や調達・購買のような業務領域の名前で紹介されています。現場ではまだ略称が通じるので、主なものを並べました。
| 略称(領域) | 主な業務 |
|---|---|
| FI(財務会計) | 仕訳、決算、売掛金・買掛金の管理 |
| CO(管理会計) | 原価の計算、部門や製品ごとの損益の把握 |
| SD(販売管理) | 受注、出荷、請求 |
| MM(購買・在庫管理) | 発注、入庫、在庫の管理 |
| PP(生産管理) | 生産の計画、製造の指示、必要な部品の量の計算 |
財務会計の担当なら、管理会計と販売・購買。売上や仕入れの取引は、最後は仕訳になって会計に流れてくるからです。
その先にあるのが、業務の知識と業界の知識です。同じ会計でも、製造業と小売業では原価の考え方が違うので、業界の事情まで話せる人は頼られる場面が増えます。
立ち位置:会社の種類・商流・働き方
3つ目の軸は、どこで働くかです。立ち位置は、次の3つで決まります。
- 会社の種類:導入ベンダー、パッケージベンダー、事業会社
- 商流:お客さんと直接契約する元請けか、その下で仕事を受ける二次請け以下か
- 働き方:正社員か、フリーランスか
導入ベンダーはERPの導入を請け負う会社、パッケージベンダーはERP製品をつくる会社。事業会社は、ERPを使う側の会社です。仕事の違いは、シリーズ1本目の記事で詳しく書いています。


商流は、触れられる工程に響きます。二次請け以下だと、要件定義は元請けがすでに終えていて、決まった仕様を作る仕事が中心になりがちです。
3つを並べると、今の職場で動かしやすいのは工程と専門。立ち位置は、転職や契約の形を変えないと動かない軸です。
私が年収レンジを決めるときに見ていた5つの条件は、この3つの軸で言うと、ほとんどが工程(役割を含む)の話でした。専門と立ち位置は、その条件を取りに行くための足場です。どこから動かすか迷ったら、私なら工程から動かします。
ERPエンジニアのキャリアパス5つ


ERPの経験を積んだ先の道は、大きく5つです。それぞれ、3つの軸のどれが動くのかと、求人で求められやすい経験を並べました。
| キャリアパス | 主な仕事 | 動く軸 | 求められやすい経験 |
|---|---|---|---|
| ERPコンサルタント | 業務の整理、要件定義、Fit&Gap、設定 | 工程・専門 | 導入プロジェクト、設定(カスタマイズ)、PM・PL(プロジェクトの責任者・リーダー)の経験 |
| PM | 計画、進み具合、予算、体制の管理 | 工程(役割) | リーダーやPM・PLの経験 |
| スペシャリスト | 特定のモジュールや製品の設計・開発・設定 | 専門 | 対象の製品での開発や設定の経験(例:S/4HANAでの開発) |
| 社内SE | 自社のERPの運用・改善、入れ替えの企画 | 立ち位置 | ERPか、その周りのシステムの経験 |
| フリーランス | 案件ごとの設計・開発・設定、PMの補佐 | 立ち位置(働き方) | すぐに現場で動ける実務経験(求人ではなく案件の募集条件) |
ERPコンサルタント
お客さんの業務を整理して、ERPでどう実現するかを決める仕事です。要件定義とFit&Gapが中心で、設定まで自分で手を動かす人もいます。
私が担当したコンサルタントの求人でも、導入プロジェクト、設定、PM・PLの経験を必須にしていました。エンジニアから移るなら、まず要件定義やFit&Gapの場に入ることが入り口になります。
プロジェクトマネージャー(PM)
導入や移行のプロジェクトで、計画・進み具合・予算・体制をまとめる仕事です。動くのは、工程の軸の中の役割の部分。
ERPのPMは、開発や設定の経験があると強みになります。作業の中身が分かるので、スケジュールやリスクの見積もりが現実からずれにくくなります。
最初からPMの肩書きを目指すより、まずはチームの数人をまとめるリーダーから。PM向けの資格は資格の章で紹介しています。
モジュール・製品のスペシャリスト
特定のモジュールや製品を深めて、設計・開発・設定を任される人になる道です。私が担当した求人にも、S/4HANAでの開発の経験を必須にしたものがありました。
「でも、リーダーをやらないと評価されないのかな…」と不安になる人もいるかもしれません。



PMやリーダーの経験がないからダメ、とは見ていませんでした。それまでの経験を全部合わせて判断していたんです。ただ、スペシャリストとして正しく評価されるかは、入る会社しだいだと思っています。
スペシャリストを大事にしている会社の見分け方は、転職先の選び方の章で紹介します。
事業会社の社内SE(情報システム部門)
自社のERPを動かし、使い勝手を直し、入れ替えを企画する仕事です。動くのは立ち位置の軸。ERPを使う側の会社に移る道です。
使う人が同じ社内にいるので、業務部門との距離はぐっと近くなります。ベンダー側でERPを触ってきた経験は、今度は作業を頼む立場で生きてきます。見積もりや仕様の話を、相手の事情ごと理解できるからです。
フリーランス
会社に属さず、案件ごとに契約して働く道です。設計や開発、設定の案件のほか、PMの補佐(PMO)の案件もあります。
単価の相場は、国などがまとめた比べられる数字がないため、この記事では載せていません。会社員との違いで先に知っておきたいのは、契約・請求・税金・保険の手続きを自分で回すことです。
2024年11月1日には、フリーランス・事業者間取引適正化等法が施行されました。フリーランスとの取引のルールを決めた法律です。たとえば、次の2つが発注する側の義務になっています。
- 仕事の内容、報酬の額、支払期日などを、書面やメールで示す(発注するすべての事業者)
- 報酬の支払期日を、納品などを受けた日から60日以内のできるだけ早い日に決める(従業員を使っている発注者)
出典:公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」、公正取引委員会・中小企業庁「フリーランス・事業者間取引適正化等法 説明資料」(2026年9月29日確認)
案件を選ぶときの目安になるのが、こうした条件が書面やメールで最初に示されるかどうか。
私なら社内SEの面接で、ERPの改修を社内でやるのか、ベンダーに出すのかを聞きます。ベンダーに出す会社なら、入社後の仕事の中心は要件の取りまとめと調整。自分で手を動かし続けたい人は、この答えで入社後の姿が見えてきます。
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年収を上げる順番:採用側が見る5つの条件を埋めていく


シリーズ1本目で、私が年収レンジを決めるときに見ていた5つの条件を紹介しました。この章では、その条件をどの順番で埋めていくかを考えます。


5つを並べ直すと、性格の違う条件が1つだけ混ざっています。上流工程、リーダー、PM・PL、コンサル業務の4つは、何をやったか。経験年数3年以上だけが、どれだけやったかの条件です。
同じ工程を同じ役割で続けていると、時間がたっても埋まるのは年数の1つだけ。工程と役割を先に動かしておけば、3年たつころには年数に加えて上流工程やリーダーの条件も書けます。
| 順番 | やること | 埋まる条件 |
|---|---|---|
| 1 | 担当する工程を上流に広げる | 上流工程 |
| 2 | リーダー・PLの経験を取りに行く | リーダー、PM・PL |
| 3 | モジュールと業務知識をセットで持つ | コンサル業務の土台 |
| 4 | 商流や案件を変える | 上流工程、コンサル業務 |
1〜3は今の職場でも手を挙げられること、4は立ち位置を変える話です。
まず担当工程を上流に広げる
運用保守や開発が中心なら、最初に動かしやすいのは工程です。いきなり要件定義を任されることは少なくても、その手前に入り口があります。
- 改修の依頼を受けたとき、仕様を確認する打ち合わせに同席させてもらう
- 設計書のレビューに、作る側の立場で参加する
- 要件定義の会議で、議事録や課題管理表(まだ決まっていないことの一覧)を引き受ける
議事録から入り、次は自分で資料を作って説明する側に回る。この一段の違いは、職務経歴書でもはっきり差が出るところです。
「うちの現場、そもそも上流の仕事が回ってこないんだけど…」という人もいますよね。その場合の動き方は、この章の最後の商流の項目に書きました。
リーダー・PLの経験を取りに行く
2つ目は役割です。リーダーとPM・PLの経験は、5つの条件のうち2つにかかわります。導入でお話ししたとおり、ERP経験者の書類で私が最初に探していた項目でもあります。
最初から大きなチームを任される必要はありません。たとえば、次のような役割があります。
- 結合テスト(機能をつなげて動かすテスト)や、データ移行のリハーサルのリーダー
- 新しく入った人の指導役
- 2〜3人の改修チームのまとめ役
規模が小さくても、何人を、どのくらいの期間、何のためにまとめたか。この3つが書ければ、リーダーの経験として十分に読めます。
モジュールと業務知識をセットで持つ
3つ目は専門。5つの条件にそのまま入っているわけではありませんが、コンサル業務の条件につながる積み方です。
広げ方は、3つの軸の章で触れたとおり今の領域の隣からです。業務の言葉で話せるようになると、お客さんへのヒアリングやFit&Gapの場に声がかかる機会が増えていきます。
そこがコンサル業務の入り口です。手始めに、担当領域の業務の流れを1枚の図に書き起こしてみるのもいい練習になります。
商流を上げる・S/4HANAやクラウドの案件に入る
4つ目は立ち位置です。今の現場が二次請け以下で、上流の工程がそもそも回ってこないなら、1〜3だけでは届かない条件が残ります。
その場合は、工程を動かせる場所に移る方法があります。移り先は、元請けのSIer(システムの開発を請け負う会社)や導入ベンダー、事業会社です。商流の仕組みは、SESの商流と転職の記事にまとめました。


案件の中身で動かす道もあります。S/4HANAや、クラウド型のERPへの移行の案件です。移行の案件で積んだ開発や設定の経験は、そのまま次の求人の必須条件に重なることがあります。
最後に、残る1つの条件である経験年数の話です。3年以上という条件だけは年数そのものなので、待つしかありません。
私が担当した求人の応募の目安は、ERPの経験1年以上でした。ただ、実際にいいなと感じたのは2年くらい続けている人です。



年数は待つしかない、と聞くと少しもどかしいですよね。でも、目安より長く続けてきた人の話に厚みがあったのは、うまくいかなかったことまで経験していたから。待っている時間も、ちゃんと中身になっているんです。
どの条件が埋まっているかで、外の求人で提示される額は動きます。社内にいるだけだと、自分がいくらで評価されるのかは分かりにくいんですよね。
提示された年収をどう交渉するかは、年収交渉のやり方の記事にまとめています。
私なら2年目のうちに、要件定義かリーダーの仕事に1つ手を挙げておきます。3年目に転職を考えたとき、経験年数3年以上と上流工程の2つの条件を、職務経歴書にまとめて書けるからです。
資格はどう見られるか:SAP認定は更新まで考えて取る
ERPのキャリアで資格を考えると、SAP認定やPM向けの資格が候補に挙がります。ERP経験者の書類で私が先に見ていたのは、役割や工程でした。資格を見るのは、そのあとです。
それでもSAP認定は、会社の研修だけでは学ぶ機会が少ない製品のぶん、自分で取りにいった人は書類で目に留まりました。ただ、仕組みが2024年から変わっているので、取ったあとの扱いまで知っておくと書類で迷いません。
SAP認定資格は1年ごとの更新制になった


SAPの公式の学習サイト(SAP Learning)では、SAP認定の有効期間は1年とされています。2024年4月から、毎年の確認テストで有効な状態を保つ仕組みになりました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 有効期間 | 1年 |
| 延ばし方 | 短い確認テスト(Stay Certified assessment)に合格すると、有効期間が12か月延びる |
| 受けるための条件 | SAP Learning Hub(年間契約の学習サービス)の契約が必要 |
| 期限を過ぎたとき | 状態が「Expired」(失効)になる。戻すには、最新版の試験に合格し直す |
| 2024年4月より前に取った資格 | 確認テストで更新しなかったものは、2025年3月31日に失効 |
数年前に取った資格なら、今は失効しているかもしれません。自分の状態は、SAP Learningの「My Learning」のページで確かめられます。更新に対応したデジタルバッジ(青色)にも、新しい有効期限が表示されます。
Learning Hubの費用を会社が出すかどうかは、職場しだいです。資格を持ち続けたいなら、面接で聞いておくと入社後にあわてずに済みます。
PM・マネジメント系の資格
PMを目指すなら、候補はPMPとIPA(情報処理推進機構)のプロジェクトマネージャ試験の2つ。PMPは、アメリカのプロジェクトマネジメント協会(PMI)が認定する資格です。
PMPは、受ける前に実務の経験が要ります。4年制大学を出た人なら、直近10年以内にプロジェクトを率いた経験が3年以上。高校を出た人なら5年以上です。
ほかに35時間の研修も必要で、合格後は3年ごとに60PDU(学習時間の単位)を積んで更新します。
出典:PMI「Project Management Professional (PMP)」(2026年9月29日確認)
プロジェクトを率いた期間が3年に届いていなければ、PMPはまだ受けられません。先に取る資格というより、PMを経験したあとの裏付けとして考えておくと無理がありません。
IPAのプロジェクトマネージャ試験は、今の名前で受けられるのが令和8年度(2026年度)後期の1回だけです。日程は次のとおり。
- 申込:2027年1月27日〜2月27日
- 科目A:2027年2月20日〜3月2日
- 科目B:2027年3月16日〜3月28日
- 合格発表:2027年6月頃
2027年度からは、高度試験を組み直した新しい試験に移る予定です。PMの分野は、プロフェッショナルデジタルスキル(マネジメント)試験(仮称)になります。始まるのは、2027年度の夏頃から秋頃の予定です。
出典:IPA「令和8年度 応用情報技術者試験、高度試験及び情報処理安全確保支援士試験の申込受付期間及び試験実施期間について」(2026年9月17日更新)、IPA「新しい試験制度(2027年度〜)」のページ(2026年4月28日更新)
制度がどう変わるかは、プロジェクトマネージャ試験の改訂の記事で詳しく書いています。


合格発表が6月頃なので、2027年の春に転職活動をするなら、この試験は結果待ちの時期に重なります。結果待ちの資格をどう書くかは、次の資格欄の表に入れました。
資格欄の書き方
資格欄では、まずIT資格があるかを見て、次にいつ頃取ったかを見ていました。ここでは、更新のある資格を持っている人が迷いやすいところに絞ります。
| 書き方 | 書類での見られ方 |
|---|---|
| 取得年月を書く | いつ頃取ったかは、IT資格の有無の次に見るところ。年月がないと判断できない |
| 正式名称で書く | 略した書き方は気になる。SAP認定も、認定の正式な名前のまま書く |
| 「受験済み・結果待ち」と書く | 頑張っているとは思う。ただ、最終面接の面接官などによく思わない人もいて、書かないほうが結果が良くなるパターンもあった |



正直に言うと、私はSAP認定の有効期限までは見ていなかったんです。確かめていたのは、ERPの部門長のほう。私が担当した求人では、書類を読むのは人事だけではありませんでした。
更新制の資格は、取得年月だけだと、今も有効かどうかが伝わりません。私なら「2026年9月時点で有効」のように一言添えます。SAP認定とPMPのように更新の周期が違う資格を並べるときも、それぞれに添えておくと誤解されません。
職務経歴書で評価されるERP経験の書き方


どの道に進むにしても、転職の最初の関門は書類です。ここでは、ERP経験者の職務経歴書で私が見ていたところに絞ります。
人事が最初に見る4つの項目
ERP経験者の職歴を開いたとき、私は次の4つをこの順番で見ていました。
| 見る順番と項目 | 書類でどう伝えるか |
|---|---|
| 1. 役割 | リーダーやマネジメントの経験があるか。何人のチームで、何を任されたか |
| 2. 経験年数 | ERPに関わった期間。目安は1年以上 |
| 3. 製品名 | SAP、Oracleなどの製品名と、担当した領域(会計・販売など) |
| 4. 担当工程 | 要件定義など、上流の工程の経験があるか |
書類全体では、年齢や転職回数など、職歴より先に目に入る項目もあります。4つの順番は、その後に職歴の中身を開いたときの話です。書類全体の見られ方は、中途の書類選考で落ちる理由の記事にまとめました。
4つに加えて、コンサル業務もしている人は、評価がいちばん高くなりました。お客さんの業務を整理したり、資料を作って説明したりした経験です。エンジニアの肩書きでも、そうした仕事をしていたなら書類に書いておく価値があります。
規模・モジュール・フェーズ・役割で書く
ERPの経験を「SAPの保守を担当」の1行で済ませると、読む側は中身を想像できません。
入れておきたいのは、規模・モジュール・フェーズ・役割の4つです。規模はユーザー数やチームの人数、モジュールは担当した領域、フェーズは工程のこと。
| ありがちな書き方 | 伝わる書き方の例 |
|---|---|
| SAPの保守を担当 | 製造業向けSAP(会計・販売)の運用保守。ユーザー数〇〇人。問い合わせ対応と改修(設計〜テスト)。〇人チームのリーダー |
| 要件定義に参加 | 販売領域の要件定義で、自分で作った業務フロー案を、お客さんのキーユーザー(業務部門の代表)に説明。〇回の会議で〇件の課題を整理 |
数字は盛らずに、自分の数字をそのまま入れれば十分です。ユーザー数や件数が正確に分からないときは、約300人のような、おおよその数でも伝わります。
面接で確かめられること



面接だからといって、ERPならではの特別な質問をしていたわけではないんです。見ていたのは、意欲と、雰囲気が合うかと、求める経験が合っているか。書類で経験が伝わっていれば、面接は確かめる場になります。
実機を触れるかどうかも、専用の質問やテストで確かめてはいませんでした。これまでの仕事の話を聞きながら、自分で手を動かしてきたかを見ていたのがメインです。
準備としては、職務経歴書に書いた改修やテストの話を、1つずつ自分の言葉で話せるようにしておく。それで足ります。
資料作成や顧客への説明の経験は、若手ほど中身を確かめます。会議で議事録を書いていただけか、自分で作った資料を詳しい人に説明したことがあるか。職務経歴書には、自分がどこまでやったかが分かる書き方をしておくと伝わります。
転職先とエージェントの選び方


書類の準備ができたら、次はどこに応募するかです。合う会社の種類は、キャリアパスごとに違います。
キャリアパス別に合う転職先
| 目指すキャリア | 合う転職先 | 確かめたいこと |
|---|---|---|
| ERPコンサルタント | 導入ベンダー、コンサルティング会社 | 要件定義など上流の工程から入れるか |
| PM | 元請けのSIer | PMを任される案件の規模と体制 |
| スペシャリスト | パッケージベンダー、導入ベンダー | 専門職を評価する仕組みがあるか(次の項目) |
| 社内SE | 事業会社 | 情報システム部門の人数と、ERPで受け持つ範囲 |
| フリーランス | 転職先ではなく案件 | 契約の条件が書面で示されるか |



元請けのSIerや導入ベンダーを探すときは、SIerを成り立ちごとに比べた記事が手がかりになります。






スペシャリストを目指すなら、専門職を評価する会社を選ぶ
キャリアパスの章で書いたとおり、採る側はPMやリーダーの経験だけで合否を決めているわけではありません。ただ、入社したあとの評価と年収を決めるのは、その会社の仕組みです。



等級(社内のランク)が、管理職にならないと上がらない会社もあります。そうした会社だと、スペシャリストとして年収を伸ばすのは難しいと私は考えています。
これが人事としての私の見方です。
国も、仕事の中身(職務)に応じて処遇を決めるジョブ型の人事を広げようとしています。2024年8月28日には、内閣官房・経済産業省・厚生労働省が「ジョブ型人事指針」を公表し、20社の導入事例を載せました。
出典:内閣官房・経済産業省・厚生労働省「ジョブ型人事指針」(2024年8月28日)
とはいえ、制度の名前だけで会社の良し悪しは決まりません。見ておきたいのは、専門職のまま上がっていける道が実際にあるかどうかです。
- 求人票のキャリアパスの欄に、管理職とは別の専門職のコースが書かれているか
- 等級や評価の説明に、専門職の区分があるか
- 採用ページや社員インタビューに、管理職ではない立場で活躍している人が出てくるか
採用側から見た、エージェントの推薦の違い



ERPの経験者は数が限られるので、推薦をそろえてくれるエージェントは、採る側にとってありがたい存在でした。要件に合う人を多く出してくれたのは、リクルートエージェントとテックゴーです。
2社は、推薦の強みの出方が違っていました。
- リクルートエージェント:
登録している人が多く、求職者が自分で応募先を選ぶ流れも多い。母数(登録している人の数)が大きいぶん、その中に要件に合う人も多かった - テックゴー:
年収を上げたい、技術を深めたいなど、目的がはっきりした人が多い。推薦の時点で求人との方向がそろっていて、そこでほかと差がついていた
目的がはっきりした人が集まるという点では、ASSIGNからの推薦も要件に合う人が多かったです。ASSIGNについては、ASSIGNの評判の記事で詳しく書いています。


私が応募する側なら、母数の大きいエージェントで求人の幅を見て、目的を伝えやすいエージェントで方向を絞ります。ERPのように経験者が限られる職種ほど、この使い分けが効いてくるはずです。
その求人が“おかしい”かどうかは
まともな求人を10件見た後にしか分かりません
人事の立場から言うと、応募先を1〜2社しか見ていない人は、そもそも異常に気づけません。相場を知らないからです。
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スペシャリストを目指すなら、私は面接で「管理職にならずに、等級や年収が上がる道はありますか」と聞きます。専門職のコースや、職務で等級を決める制度の説明がすぐに出てくる会社は、専門職を大事にしている会社のサインです。
よくある質問
- SAP以外のERP(国産製品やOracleなど)の経験でも、キャリアアップできますか?
-
できます。私が担当した求人には、SAPに限らず、国産を含めた何かしらのERP製品の経験で応募できるものもありました。
会計や販売などの業務の知識は、製品が変わってもそのまま生かせます。国産のERP製品の位置づけは、シリーズ1本目の記事で触れました。
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ERPエンジニアとは?仕事内容・年収・将来性と2027年問題を現役IT人事が解説 「ERPエンジニアって、普通のSEと何が違うんだろう」「年収や将来性は、実際どうなんだろう」 開発や運用保守の経験を積んで、次の道を考え始めると、ERPという言葉が目… - 40代でPMやリーダーの経験がなくても、転職できますか?
-
できます。私はリーダーの経験の有無だけで決めることはなく、それまでの経験を合わせて見ていました。ただ、年齢が上がるほど、何ができるかは厳しく見ます。
スペシャリストとしてできることを工程の言葉で書き、専門職を評価する会社を選ぶのが近道です。40代の書類の見られ方は、45歳以上のIT職の書類選考の記事と、40代の経験の棚卸しの記事にまとめています。
- 運用保守の経験しかありませんが、上流の工程に行けますか?
-
行ける道はあります。入り口は、要件定義の一歩手前の仕事。
入り口の例と、現場に上流の仕事がない場合の動き方は、年収を上げる順番の章に書きました。
まとめ|ERPエンジニアのキャリアパスと年収の上げ方
この記事の要点を振り返ります。
- キャリアは3つの軸で動く。工程・専門・立ち位置のうち、今の職場で動かしやすいのは工程と専門です。
- キャリアパスは大きく5つ。ERPコンサル・PM・スペシャリスト・社内SE・フリーランスで、動く軸と求められる経験が違います。
- 工程と役割を先に動かす。年収レンジを決める5つの条件のうち、年数以外の4つは何をやったかの条件です。
- SAP認定は1年ごとの更新制。2024年4月からの仕組みで、資格欄には取得年月と有効期限を添えると伝わります。
- 職務経歴書は役割から書く。私は年間1,000件超の書類で、役割・年数・製品・工程の順にERP経験を見ていました。
- 専門職を評価する会社を選ぶ。リーダー経験がなくても不利とは限らず、入社後の評価は会社の仕組みで決まります。


次の道で迷うのは、普通のことだと思います。運用保守や開発が続くと、この先がぼんやりしてきますよね。
小さな一歩を1つ挙げるなら、今のプロジェクトで議事録か課題管理表を1つ引き受けてみること。要件定義の場に入る、いちばん小さな入り口です。



年収の条件は、一度に全部そろわなくて大丈夫だと思います。条件が埋まるたびに、職務経歴書に書ける行が増えていく。書類を読む側にも、その積み重ねはちゃんと伝わります。
経歴ごとのERPへの入り方と、ERPの仕事・年収の全体像は、シリーズのほかの2本にまとめています。




今の自分の相場は、外の求人を並べてみないと見えにくいものです。ERPやSAPの実務経験がある方なら、求人を何件か見比べるだけでも、次に埋める条件の見当がつきます。
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