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ITストラテジストはなくなる?|”最難関”国家試験の行方と転職への影響を現役IT人事が解説

「ITストラテジスト試験、なくなるって本当?」

2026年に入ってから、この不安の声をSNSや転職相談の場で頻繁に目にするようになりました。

ITストラテジストといえば、IPA高度試験の中でも「最難関」と呼ばれてきた試験です。経営戦略とIT戦略を結びつけて論文で表現するという、知識だけでは太刀打ちできない試験。「実務経験5年分のスキルに相当する」とまで言われてきたこの試験がなくなる——という話は、合格者にとっても受験を考えている方にとっても、ただの制度変更の話では済まないと思います。

結論から言うと、ITストラテジスト試験は「なくなる」のではなく「再編・統合」 です。しかも、DX推進が叫ばれる今、IT戦略を立案・推進できる人材の市場価値はむしろ上がっています。

すけさん

この記事では、IPA(情報処理推進機構)と経済産業省が公式に発表した情報をもとに、何がどう変わるのかを正確に整理したうえで、現役IT人事の立場から「IT戦略人材の転職市場での評価」 までお伝えします。

この記事で分かること
  • ITストラテジスト試験は本当に「なくなる」のか
  • 2027年度からの新試験制度でSTの位置づけはどう変わるのか
  • 労働基準法に記載されたSTの法的位置づけはどうなるのか
  • すでに合格している人の資格は今後も有効なのか
  • 転職市場でのIT戦略人材の評価はどうなるのか(現役IT人事の見解)

目次

この記事の結論(先に知りたい方へ)

詳しく知りたい方は、このまま読み進めてください。


ITストラテジスト試験は「なくなる」のか?【結論:名称廃止・マネジメント領域に統合】

まず一番大事なポイントから。「なくなる」という表現は正確ではありません。

正しくは、応用情報技術者試験と高度試験8区分が、2027年度から「プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)」という3つの試験に再編されるということです。

ITストラテジスト試験もこの再編の対象ですが、IT戦略に関わるスキルが消えてなくなるわけではありません。

2027年度から「プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)」に再編される

2026年3月31日、経済産業省とIPAが正式に見直し案を公表しました。

現在の応用情報技術者試験と高度試験8区分(ITストラテジスト、システムアーキテクト、プロジェクトマネージャ、ネットワークスペシャリスト、データベーススペシャリスト、エンベデッドシステムスペシャリスト、ITサービスマネージャ、システム監査技術者)が、以下の3領域・3試験に再編されます。

  • マネジメント領域:PM・SM・AU・STなどの分野を統合
  • データ・AI領域:DBを中心にデータ利活用・AI要素を強化
  • システム領域:NW・ES・SAなどの分野を統合

参照:経済産業省プレスリリース「情報処理技術者試験における試験区分体系などの見直し(案)について」(2026年3月31日)

ITストラテジストは「マネジメント領域」に統合される

ここが、シリーズで取り上げた他の高度試験との大きな違いです。

ネットワークスペシャリストやシステムアーキテクトは「システム領域」、データベーススペシャリストは「データ・AI領域」に統合されますが、ITストラテジストは「マネジメント領域」に統合されます。

マネジメント領域には、プロジェクトマネージャ(PM)、ITサービスマネージャ(SM)、システム監査技術者(AU)、そしてITストラテジスト(ST)が集約されます。つまり、経営・管理寄りの専門性がひとつの領域にまとめられる形です。

「IT戦略の立案」というSTの核心的なスキルは、新試験のマネジメント領域にも引き継がれる方向です。ただし、PM・SM・AUと一括りにされることで、STが持っていた「経営視点でIT全体を俯瞰する」という独自の尖りが薄まるのでは——という懸念も業界には存在します。

「確定情報」と「検討段階」を混同しないための整理

ここで注意しておきたいのが、今の段階ではすべてが確定しているわけではないということです。

現時点(2026年5月)の状況を整理します。

確定していること:

  • 2026年度から高度試験がCBT(コンピュータベース)方式に移行
  • 2026年度の試験区分は現行のまま(ITストラテジスト試験として受験可能)
  • STは旧秋期試験のため、後期試験として2027年2月頃にCBT方式で実施予定

検討段階(案)のもの:

  • 2027年度からの3領域3試験への再編(見直し案として公表済み)
  • 新試験の具体的なシラバス(2026年夏頃に順次公表予定)
  • 論述試験のあり方(2028年度以降に向けて継続検討)

参照:IPA「令和8年度(2026年度)応用情報技術者試験、高度試験及び情報処理安全確保支援士試験の実施予定について」

採用のウラ側メモ

制度変更の正確な理解は、面接でもプラスに働きます。『なくなるらしいですね』と曖昧に話すより、『マネジメント領域に統合される検討案が出ています』と正確に語れる人は、情報収集力と論理的思考力の両方をアピールできます。


「最難関」ITストラテジストの特殊な位置づけとは?

ITストラテジスト試験は、他の高度試験とは少し異なる、特別なポジションを持つ試験です。ここでは、STならではの特殊性を整理しておきます。

労働基準法にも記載された唯一の高度試験区分

意外と知られていませんが、ITストラテジストは労働基準法第14条において特別な位置づけを持っています。

同法では、高度な専門的知識等を有する労働者について、通常の有期雇用契約の上限(3年)を超える5年間の契約が認められると定めています。この「高度な専門的知識等を有する者」の一覧に、医師・弁護士・公認会計士・税理士などと並んでITストラテジスト合格者が明記されています。

IPA高度試験の中でこの法的位置づけを持つのは、ITストラテジストだけです。

再編後にこの法的位置づけがどうなるかは、現時点で公式な発表はありません。法改正や省令の見直しが必要になる可能性がありますが、何らかの経過措置が取られると考えるのが自然です。確定情報が出たら、本記事を更新予定です。

参照:労働基準法第14条厚生労働省告示「基準を定める件」

「実務経験5年分のスキルに相当」と言われる理由

ITストラテジスト試験が「最難関」と呼ばれるのには、明確な理由があります。

まず、受験者層のレベルが高いこと。

受験者の平均年齢は41.8歳(2025年度春期・IPA統計情報)で、高度試験の中でも最も高い部類に入ります。実務経験豊富なベテランが受験する中で、合格率は14〜16%しかありません。

出典:IPA 統計情報(応用情報技術者試験、高度試験、情報処理安全確保支援士試験)

さらに、論述試験のハードルが極めて高いこと。科目B-2では120分で3,000字以上の論文を書き上げる必要があり、経営戦略とIT戦略を結びつけた実務経験がなければ対応が困難です。

TAC等の資格スクールでも「ITストラテジスト合格は実務経験5年分に相当する」と紹介されるなど、業界での評価が非常に高い試験です。

業界からも「名称廃止」への懸念の声が上がっている

ITストラテジストの名称がなくなることに対しては、業界でも反響が大きいです。

日経ビジネスでは、ITジャーナリストの木村岳史氏が「DXに必須の役割にもかかわらず、ITストラテジストの名称が消えるのは大問題」と指摘する記事を掲載しています。

経産省の担当者は「新しい試験にはITストラテジストの重要な項目をきちんと盛り込む」と説明していますが、名称が消えることで「IT戦略の専門家」という職種の認知・育成に影響が出るのではという懸念は根強いものがあります。

採用のウラ側メモ

正直に言うと、人事としてST合格者の書類を見たときの印象は特別です。『この人は経営視点でITを語れる人だ』と一目で判断できるからです。この”一目でわかるラベル”がなくなることの影響は、採用の現場でも小さくないと感じています。


すでにITストラテジストに合格している人はどうなる?

「最難関試験を突破した実績が無駄になるの?」——そう不安に感じている方もいるのではないでしょうか。

結論から言うと、すでに取得した合格実績が消えることはありません。

合格実績は引き続き有効

過去にITストラテジスト試験に合格した事実は、新試験制度になっても変わりません。履歴書に「ITストラテジスト試験 合格」と記載し続けることができますし、その価値がなくなるわけでもありません。

IPAは新試験制度の導入にあわせて、個人のスキル情報・キャリア情報を蓄積・可視化できるプラットフォームの構築も進めています。過去の合格実績も登録・活用できるようにする方針です。

参照:IPA「情報処理技術者試験及び情報処理安全確保支援士試験の見直しの検討状況について」(2026年3月31日)

新試験への科目免除の経過措置も検討されている

現行の高度試験では、一度合格すると他の高度試験の科目A-1(旧午前I)が2年間免除される仕組みがあります。

新試験制度でも、現行の高度試験で科目免除要件を満たした方は、一定期間、新試験でも科目免除を受けられる経過措置が検討されています。

2026年度にITストラテジスト試験に合格しておけば、2027年度以降の新試験でも免除のメリットを活かせる可能性が高いということです。

採用のウラ側メモ

合格証の日付が古くても、ST合格の事実は特別な評価対象です。ただし受験者の平均年齢が41.8歳の試験なので、20〜30代で合格していれば『この年齢でSTに受かったのか』とさらに強い印象になります。年齢と合格のタイミングも、書類選考では見ていますよ。


ITストラテジストの転職市場での評価はどうなる?【現役IT人事の見解】

ここからは、日々IT人材の採用に関わっている私の立場からお話しします。

IT戦略人材の需要はDX推進で急増している

ITストラテジストが対象とする「IT戦略の立案・推進」という領域は、近年の転職市場で最も需要が伸びている分野のひとつです。

実際に、採用の現場では以下のような職種の求人が増えています。

  • CIO補佐・IT企画部門長:経営層とIT部門の橋渡しを担う。IT投資判断をリードできる人材が不足
  • ITコンサルタント:クライアント企業のIT戦略立案を支援。コンサルファームだけでなく事業会社のDX推進室でも採用が活発
  • DX推進リーダー:全社的なデジタル変革を主導するポジション。経営視点とIT知識の両方が必要

こうした求人では「ITストラテジスト合格者歓迎」と明記されていたり、面接で「IT戦略の立案経験」を詳しく聞かれたりするケースが増えています。

試験名がなくなっても、「経営とITを結びつけて戦略を語れる人材」を求める市場のニーズは拡大し続けています。

高度試験の「最高峰」を突破した事実は変わらない

企業の採用担当者がST合格者を特別に評価する根本的な理由は、合格率14〜16%の最難関試験を、ベテラン層の中で突破した事実にあります。

ITストラテジスト試験の近年の合格率は以下のとおりです。

  • 2023年度:15.5%
  • 2024年度:15.8%
  • 2025年度:15.0%

(出典:IPA 統計情報(応用情報技術者試験、高度試験、情報処理安全確保支援士試験)

すけさん

しかもこの合格率は、平均年齢41.8歳のベテラン受験者層の中での数字です。実務経験豊富な人たちが受けて8割以上が不合格になる試験を突破した事実は、試験名が変わっても「経営視点でITを語れる人材」の証明として揺るぎません。

「資格+経営視点の実務経験」がセットで評価される

一方で、ST合格者に特に求めるのは、資格で証明した能力を実務でどう発揮してきたかです。

書類選考の場面で私が実際に見ているのは、以下のようなポイントです。

  • 資格欄に「ITストラテジスト合格」とある → 大きなプラス評価(経営視点+論理的思考力の証明)
  • 職務経歴書に「IT中期計画の策定」「IT投資の提案・承認獲得」「DX推進プロジェクトの主導」が書かれている → 非常に高い評価
  • 資格はあるが、経営層との折衝や戦略立案の実務経験が見えない → 「今後どう活かすのか」をぜひ聞きたい

ST合格者には、技術的なスキルだけでなく「経営層の言葉でITの価値を語れるか」を面接で確認することが多いです。ここが他の高度試験合格者との決定的な違いです。

新試験「マネジメント領域」は転職で武器になるか?

2027年度から始まる新試験の「マネジメント領域」は、PM・SM・AU・STの4つの試験区分が統合されます。

人事の立場から見ると、マネジメント全般のスキルを一度の試験で証明できる点はメリットです。特に、PM経験もST的な戦略立案経験も両方持つ人材には、新試験のほうが能力をトータルで証明しやすくなるかもしれません。

一方で、現行のSTが持っていた「IT戦略の専門家」という尖った証明力は薄まる可能性があります。

PM・SM・AUと同じ試験に統合されるため、「マネジメント領域に合格した」だけでは、IT戦略に特化したスキルの証明としては弱くなる懸念はあります。

短期的には、「ITストラテジスト」という名称のほうが、採用側にとってわかりやすく、ダイレクトに刺さるというのが率直な見解です。

採用のウラ側メモ

ST合格者の面接では『経営層にIT投資を提案して、反対された経験はありますか?そのときどう対応しましたか?』と聞くことがあります。この質問にリアルなエピソードで答えられる人は、ST合格の重みを実務で裏付けている人です。


今から受験すべき?新試験を待つべき?【判断フレームワーク】

「ITストラテジスト試験を受けようと思っていたけど、新試験を待つべき?」

ここでは、状況別の判断基準を整理します。

2026年度中に受験すべき人

以下に当てはまる方は、2026年度に受けておくのが得策です。

  • 「ITストラテジスト」の名称と法的位置づけが欲しい方
    労働基準法第14条に基づく特別な位置づけを持つ試験の合格者として、名称が存在するうちに取得しておく意義は大きいです
  • 論述試験に挑戦したい方
    120分で3,000字以上の論文を書く形式の国家試験に挑戦できる最後のチャンスになる可能性があります
  • CIO・ITコンサル・DX推進リーダーへの転職を考えている方
    「ITストラテジスト」の名称は、こうしたハイクラスポジションの採用で最も通りの良い資格です
  • SA・PM等の高度試験に合格済みで科目免除が使える方
    科目A-1免除の有効期限内であれば、負担を軽くして挑戦できます

新試験を待ったほうがよい人

一方、以下のような方は、焦って2026年度に受ける必要はないかもしれません。

  • まだ基本情報や応用情報も未取得の方
    まずは土台となる試験から挑戦するのが現実的です。新試験のPD試験は、1つ合格すれば応用情報と同等の位置づけになります
  • PM・SM分野にも広く興味がある方
    新試験の「マネジメント領域」はPM・SM・AU・STが統合されるため、マネジメントスキルを幅広く証明できます。特定分野に絞らず広く学びたい方には、新試験のほうが合っているかもしれません
  • 論述試験に強い苦手意識がある方
    新試験は多肢選択式のみになる予定なので、論述が障壁だった方にとってはチャレンジしやすくなる可能性があります

2026年度の受験スケジュール

ITストラテジスト試験は旧秋期の試験区分です。2026年度は後期試験として2027年2月頃にCBT方式で実施予定です。

データベーススペシャリスト試験と同時期の実施になります。

申込方法や具体的な日程は、IPA公式ページで必ず最新情報を確認しましょう。

参照:IPA「令和8年度(2026年度)応用情報技術者試験、高度試験及び情報処理安全確保支援士試験の実施予定について」

採用のウラ側メモ

ITストラテジストは”日本一かっこいい名前の資格”と言う人もいるほど、名称自体にブランド力があります。冗談のように聞こえるかもしれませんが、面接で『ITストラテジストに合格しています』と言ったときの相手の反応は、他の高度試験とは明らかに違います。この名称を手に入れられる最後のチャンスです。


よくある質問(Q&A)

ITストラテジストの合格証は、新試験制度になっても使えますか?

はい、使えます。

過去の合格実績は新試験制度に移行しても有効です。履歴書に「ITストラテジスト試験 合格」と記載し続けることができます。

IPAは個人のスキル情報を蓄積・可視化するプラットフォームの構築を進めており、過去の合格情報も登録・活用できるようにする方針です。

労働基準法でのITストラテジストの位置づけは、再編後どうなりますか?

現時点で公式な発表はありません。

現行の労働基準法第14条および関連する厚生労働省告示では、ITストラテジスト試験の合格者が「専門的知識等を有する有期雇用労働者」として明記されています。試験名称が変わった場合、この記載をどうするか(法改正・省令改正・経過措置等)は、厚生労働省と経産省の調整が必要になると考えられます。

現行ST合格者の法的位置づけが遡及的に失われることは考えにくいですが、新試験合格者にこの位置づけが引き継がれるかは不透明です。確定情報が出たら、本記事を更新予定です。

ITストラテジストとプロジェクトマネージャは同じ「マネジメント領域」ですが、違いは何ですか?

同じマネジメント領域に統合されますが、それぞれが問う専門性は大きく異なります。

  • ITストラテジスト(ST)
    「何を作るか」を経営視点で決める試験。IT戦略の立案、IT投資判断、ビジネスとITの整合性がテーマ
  • プロジェクトマネージャ(PM)
    「どうやって作るか」を管理する試験。プロジェクトの計画・実行・コントロールがテーマ

一言で言えば、STは「戦略」、PMは「実行管理」です。視座のレイヤーが異なります。

新試験では科目A-2(専門知識)の出題範囲が分野ごとに異なる設計になる予定なので、マネジメント領域の中でもST系のスキルとPM系のスキルは区別される見込みです。


まとめ

この記事のポイントを改めて整理します。

この記事のまとめ
  • ITストラテジスト試験は「なくなる」のではなく、2027年度から「プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)」のマネジメント領域に統合される
  • 「ITストラテジスト」の名称で受験できるのは2026年度が最後(後期試験:2027年2月頃・CBT方式)
  • 論述試験は新試験では実施されない方向(2028年度以降に向けて継続検討中)
  • 労働基準法に記載されたSTの法的位置づけの行方は現時点で未定
  • すでに合格済みの方の資格は引き続き有効。新試験への科目免除の経過措置も検討中
  • 転職市場ではIT戦略人材(CIO補佐・ITコンサル・DX推進リーダー)の需要が急増しており、合格率14〜16%の最難関試験を突破した事実の価値は変わらない

IPA試験制度の改革は、IT業界で働く人全員に影響があるテーマです。今後も新しい情報が出たら、この記事を更新していきます。



※この記事の情報は2026年5月時点のものです。IPA・経済産業省の正式発表により内容が変更される場合があります。最新情報は必ずIPA公式サイトでご確認ください。

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