すけさんこんにちは。IT企業で採用を担当している現役人事です。私は日々、エンジニアの求人票を作り、年収の提示額を決める会議に出ています。この記事では求人票を作る側から見た需要と年収のリアルをお伝えします。
「生成AIを使えるようになったら、エンジニアの年収は本当に上がるの?」
「AIスキルの需要が高いと聞くけれど、実際の求人はどう変わっているの?」
こうした疑問に対して、ネット上には「生成AIエンジニアなら年収1,000万円超」といった景気のいい話があふれています。ただ、その多くは出典が曖昧だったり、ごく一部の専門職の話だったりします。知りたいのはそこではなく、「普通のエンジニアが生成AIを使えるようになると、市場価値はどう変わるのか」ではないでしょうか。
この記事では、出典のあるデータと、求人票を作っている人事としての実感だけを使って、生成AIを使えるエンジニアの需要と年収の現在地を解説します。誇張なしの現場のリアルをお届けします。
- データで見る「生成AIを使えるエンジニア」の需要の伸び
- 採用が「新卒・未経験の育成」から「中途経験者」へ舵を切っている背景
- AIスキルの有無でどれくらい年収に差が出るか(出典付き)
- 求人票の必須・歓迎スキル欄に起きている具体的な変化
- 市場価値を実際の年収に変える2つのルート
先に結論|この記事の要点3行まとめ
先に要点をまとめます。詳しい根拠はこのあとの各章で解説していますので、気になったところから読んでみてください。
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| 需要 | AI関連求人の割合は約2年で4倍に拡大。エンジニア全体も求人倍率10倍超の売り手市場が継続中 |
| 年収 | AIエンジニアの平均年収はITエンジニア全体を約150万円上回る。ただし「使える」だけでは上がらず、差がつく条件がある |
| 追い風 | 採用は新卒・未経験の育成から中途経験者へシフト中。すでに経験のある人には強い追い風 |


年収の話は「平均値」だけを見ると判断を誤ります。大事なのは平均より「何が差を生んでいるか」です。この記事では差がつく条件まで分解しているので、ご自身の現在地と照らしながら読んでみてください。
データで見る「生成AIを使えるエンジニア」の需要


AI関連求人の割合は約2年で4倍に増加
まず、需要の伸びを客観的なデータで確認しましょう。


求人広告データを分析したナウキャストの調査によると、IT求人全体に占めるAI求人の割合は、2024年1〜3月の0.5%から2025年9〜12月には2.0%へと、約2年で4倍に拡大しています(出典:ナウキャスト「求人広告データを用いたAI人材需要の分析」)。
割合としてはまだ小さく見えるかもしれませんが、伸び率に注目してください。企業がAIを扱える人材の採用に本格的に動き始めたのは、まさにこの1〜2年です。採用の現場感覚でも、「AI活用経験のある人がほしい」という現場からのリクエストは明らかに増えています。
需要の背景には、企業のAI導入と人材のギャップがあります。JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)の調査では、言語系生成AIを「導入済み」または「試験導入中・導入準備中」と回答した企業は41.2%と、前年度の26.9%から大きく伸びました(出典:JUAS「企業IT動向調査2025」)。ツールの導入は進んだのに、使いこなして成果につなげられる人材が足りない。このギャップこそが、「生成AIを使えるエンジニア」の需要の源泉です。
エンジニア全体でも求人倍率10倍超の売り手市場
土台となるエンジニア市場全体も、引き続き強い売り手市場です。dodaの転職求人倍率レポートでは、エンジニア(IT・通信)の求人倍率は10倍を超えています(出典:doda転職求人倍率レポート(2026年1月発行版))。
希少性は、そのまま交渉力と年収に直結します。
「AI生成コードをレビューできる人」という新しい需要
もう1つ、見逃せない新しい需要があります。
レバテックの調査では、AI生成コードのレビューを必要と考える人のうち95.5%が「今後もレビューは必要」と回答しています(出典:レバテック調査・マイナビニュース)。
AIがコードを書く量が増えるほど、その品質を確かめる人の仕事が増える。この構造から、「AIに書かせて、検証できる人」という新しい人材像への需要が生まれています。単に「AIでコードを書けます」より一段上の、これから最も求められるポジションです。
実際、採用の現場でも「AIでの開発は進めたいが、出てきたコードの良し悪しを判断できる人が足りない」という声を聞くことが増えました。この「検証できる人」には決まった職種名がまだないため、求人票では歓迎欄の一文として表現されているのが現状です。裏を返せば、職種を変えなくても、今の仕事にレビューや検証の実績を足すだけでこの需要を取り込めるということです。
「AI求人」と名前がついていなくても、中身を読むとAI活用経験を求めている求人が増えています。求人検索では職種名だけでなく、本文を「生成AI」「AI活用」で検索すると、需要の実態がつかめます。
採用の舵は「新卒・未経験の育成」から「中途経験者」へ



採用計画の会議で、ここ数年の空気の変化を肌で感じています。以前は「若手を採って育てよう」が合言葉でしたが、今は「経験者を採れないか、まず検討しよう」から会議が始まることが増えました。


新卒採用を絞る企業が増えている|採用現場の実感
米国の調査会社SignalFireのレポートでは、大手テック企業の新卒採用は前年比で約25%減少した一方、経験2〜5年のミッドレベル人材の採用は増加しています(出典:SignalFire「State of Tech Talent Report」)。
これは海外だけの話ではありません。日本でも、新卒採用の枠を縮小してその分の予算を中途の経験者採用に振り分ける動きが、人事同士の情報交換でも明らかに増えています。生成AIが初心者向けの仕事を代替するようになり、「育成の入口」の仕事が減ったことが背景にあります。
未経験者の中途採用も控えめになっている
新卒だけではありません。AIの普及以降、中途の未経験者採用も控えめにする企業が増えています。私自身、採用計画の中で未経験枠を減らす判断に関わってきました。



理由はシンプルで、AIが「未経験者に任せながら育てる仕事」を先に代替してしまったため、育成の受け皿が細くなっているからです。
すでに経験がある人には、実は追い風になる理由
厳しい話に聞こえたかもしれませんが、視点を変えると、この状況はすでに実務経験を持っている人にとって強い追い風です。
- 採用予算が経験者に集中している:新卒・未経験枠から移された予算が、中途経験者の年収原資になっています
- 競合は同じ経験者だけ:応募者が増えているのは未経験枠で、経験者同士の競争環境は大きく変わっていません
- AI活用経験が上乗せ材料になる:経験×AIの組み合わせを提示できる人はまだ少なく、差別化しやすい状態です
「実務経験があり、AIも業務で使っている」。この2つが揃っているだけで、今の転職市場ではかなり有利なポジションに立てます。実際、経験者の中途採用では、辞退を防ぐために提示年収を上乗せする場面が以前より増えたというのが、オファー面談に関わっている立場での率直な実感です。
経験3年前後の方は、今が動きどきの1つです。企業が最も採りたい「若手経験者」に該当し、AI活用経験を添えられれば提示年収の交渉余地も広がります。市場の状況は変わるので、好条件のうちに一度確かめる価値があります。
生成AIを使えるエンジニアの年収相場



年収の話になると「AIで一発逆転」のような情報も見かけますが、提示額を決める会議に出ている立場から言うと、実態はもっと地に足がついています。誇張なしの相場感をお伝えしますね。


データで見る年収水準|AIスキルの有無で約150万円の差
求人情報を集計している求人ボックスの給料ナビによると、本記事執筆時点でAIエンジニアの正社員の平均年収は約600万円。一方、ITエンジニア全体の平均年収は約446万円です(出典:求人ボックス給料ナビ「AIエンジニア」、同「ITエンジニア」)。
| 職種 | 正社員の平均年収 |
|---|---|
| AIエンジニア | 約600万円 |
| ITエンジニア全体 | 約446万円 |
同じサイトの集計同士で比べると、その差は約150万円。AI関連のスキルが年収の上乗せ要因になっていることは、データからも読み取れます。ただし注意してほしいのは、これは「AIエンジニア」という職種で募集される求人の水準だということ。「生成AIを使える普通のエンジニア」の年収がどうなるかは、次でお話しする条件次第です。
もう1つ、平均値を読むときの注意点があります。AIエンジニアの求人は都市部や大手・資金力のある企業に偏る傾向があるため、平均年収も高めに出やすい構造です。一方、人事としての実感で言うと、「生成AIを使える普通のエンジニア」の場合、職種の平均値が変わるというより、同じポジションの提示レンジの中で上限側に寄るという形で差が出ます。同じ求人でも、下限と上限の間には通常100万円以上の幅があります。AI活用の実績は、その幅のどこに着地するかを左右する、実に現実的な交渉材料なんです。
「AIを使える」だけでは年収は上がらない|差がつく3つの条件
採用側として正直にお伝えすると、「ChatGPTを使えます」だけで提示年収を上げることはありません。今やそれは、多くの応募者が同じように言えるからです。提示額を上げる判断につながるのは、次の3つの条件です。
- 成果に変換した実績がある:「AIで開発工数を◯割削減した」のように、活用を数字の成果で語れる
- 検証・リスク管理まで含めて設計できる:出力の検証手順や情報漏えい対策まで考えて運用した経験がある
- 実務経験との掛け算になっている:既存の開発・インフラ・業務知識にAIが上乗せされている(AI単体ではない)
この3つが揃った候補者は、社内の年収テーブルの上限に近い提示や、ポジションを一段上げた提示を検討します。逆に「触ったことがあるだけ」では、残念ながら評価は変わりません。評価されるAI活用の中身は、こちらの記事で詳しく解説しています。


年収が上がりやすい職種・領域
採用市場の実感として、AI活用経験が年収に反映されやすいのは次のような領域です。
- 上流工程・PM領域:もともと求人倍率が20〜30倍と極端に高く、AI活用で生産性を語れる人はさらに希少です
- AI導入を推進する社内ポジション:開発とAI活用ルールづくりの両方が分かる人材への需要が伸びています
- レビュー・品質保証・セキュリティ:AI生成コードの検証需要の高まりを、そのまま追い風にできる領域です
共通しているのは、どれも「AIそのものを作る仕事」ではなく、「AIと実務の間をつなぐ仕事」だということです。高度なAI研究のスキルは必要ありません。今の職種の延長線上でこれらの領域に寄せていくことが、年収を上げる最短ルートになります。
年収交渉の場では「AIが使えます」ではなく「AIでこの成果を出しました」と数字で語ってください。概算でも構いません。提示額を決める会議で説得材料になるのは、スキル名ではなく成果の数字です。
求人票はこう変わった|作る側の人事が解説



求人票は、企業の本音が最も表れる文書です。私も毎月のように書き直していますが、この2年の変化は過去に例がないスピードでした。どの欄がどう変わったか、作る側の視点で解説します。


必須・歓迎スキル欄に増えた文言
この1〜2年で、エンジニア求人の必須・歓迎スキル欄には、次のような文言が目に見えて増えました。
| 変化 | 具体的な文言の例 |
|---|---|
| 増えた文言 | 「生成AIツールの業務活用経験」「AIを活用した開発プロセス改善の経験」「AI生成コードのレビュー経験」「AI活用ガイドライン整備への関与」 |
| 減りつつある文言 | 「◯◯言語での実装経験のみを問う要件」「コーダー・テスターなど単一作業のポジション名」 |
イメージしやすいように、バックエンドエンジニアの求人を例にすると、以前は「Javaでの開発経験3年以上」だけだった要件が、今は「Javaでの開発経験3年以上」に加えて歓迎欄に「生成AIを活用した開発効率化の経験」「AIコーディング支援ツールの利用経験」が並ぶ、という形です。募集する職種自体は変わっていないのに、求める人物像にAIの一行が足されている。これが現場で起きている変化の実態です。
ポイントは、AI関連の文言の多くがまだ「歓迎」欄にあることです。
つまり、持っていれば差がつくが、持っている人はまだ少ないという過渡期。
歓迎要件は、先に動いた人が得をするボーナスステージのようなものです。
単一作業のポジションは統合されつつある
もう1つの変化が、求人の「統合」です。以前は「コーダー」「テスター」と作業単位で分けて募集していたポジションが、「設計からテストまで一気通貫で担当」という1つの求人にまとめられるケースが増えました。AIで1人あたりのカバー範囲が広がった結果、求人の単位も大きくなっているんです。この変化は、幅広く経験を積んできた人ほど有利に働きます。
求人票から「AI活用に本気の企業」を見分ける方法
転職先を選ぶ側としては、求人票からその企業のAIへの本気度を読み取ることもできます。チェックポイントは次の3つです。
- 具体的なツール名・体制の記載があるか:「AI活用推進中」だけの抽象表現より、開発環境や利用ルールまで書いてある企業のほうが実態が伴っています
- AI活用が評価制度とつながっているか:業務改善の提案を評価する仕組みに触れている企業は、入社後にAIスキルが年収に反映されやすいです
- セキュリティ・ガイドラインへの言及があるか:利用ルールが整っている企業は、安心してAIを使いながら成長できる環境です
面接の逆質問で「エンジニアの生成AI活用はどの程度進んでいますか」と聞いてみてください。答えの具体性で、求人票の文言が本物か飾りかが分かります。この逆質問自体が、AIへの感度のアピールにもなります。
市場価値を年収に変える2つのルート


ルート①:今の会社で実績を作り、評価につなげる
1つ目は、今の職場でAI活用の実績を作るルートです。転職しなくても市場価値は上げられますし、後で転職する場合の武器も同時に手に入る、二重に得なルートです。具体的には次の3ステップで進めます。
- 業務の一部にAIを組み込む:テストコード作成やドキュメントの下書きなど、効果が測りやすい作業から始めます
- 効果を数字で記録する:「作業時間が◯時間→◯時間になった」と、導入前後の比較を残します
- チームへ展開する:検証手順や注意点をまとめて共有すれば、「個人の工夫」が「組織への貢献」に格上げされます
この③まで到達すると、社内評価の材料になると同時に、職務経歴書で「提案・実施・改善まで回した実績」として語れるようになります。
ルート②:転職市場で価値を確かめ、条件に反映させる
2つ目は、転職市場で自分の価値を確かめるルートです。社内評価と市場評価は、必ずしも一致しません。特に今は経験者への追い風が吹いているため、社内では普通の評価でも、市場では想像以上の提示が出るケースが実際にあります。
IT業界に強い転職エージェントに経歴を見せると、現時点の想定年収と、何を足せば上がるかを教えてもらえます。すぐに転職する気がなくても、この「値付けの確認」だけで学習の方向性が定まります。未経験者向けとは別に、経験者のキャリア相談に強いエージェントの選び方はこちらの記事にまとめています。
その会社が良いかどうかは
他の選択肢を見ないと判断できません
人事の立場から言うと、比較対象を持たないまま決めている人が一番損をしています。
50歳未満/未経験は対象外
✓ リモート可否・フレックスなど細かい条件で検索できる
✓ 転職を決めていなくても登録できる
20代後半〜30代が中心
✓ 土曜1日で選考が終わる1Day選考会あり
✓ ITコンサル・メガベンチャーの求人が豊富
ルート①と②は択一ではなく並行が正解です。社内で実績を作りながら、半年に一度は市場価値を確認する。この習慣がある人は、動くべきタイミングを逃しません。採用する側から見ても、そういう人は交渉がうまいです。
よくある質問
- 未経験でも生成AI関連の仕事に就けますか?
-
AI専門職への未経験転職はかなり狭き門ですが、「AIを活用できる人材」としてなら道はあります。ただし本文の通り、未経験者の採用自体が控えめになっているため、戦略が必要です。未経験からのIT転職の現実と対策は、別記事で詳しく解説しています。
- 生成AIのスキルはどうやって証明すればいいですか?
-
資格より「業務での活用実績」が最も強い証明になります。職務経歴書に「どの業務に、どう組み込み、どんな成果が出たか」を数字付きで書いてください。検証手順や情報管理への配慮まで書けると、採用側の評価は一段上がります。
- AIを活用しても今の会社で評価・年収に反映されません。どうすべきですか?
-
まず実績を数字で記録し、評価面談で伝えることから始めてください。それでも反映されない場合、社内評価と市場評価がずれている可能性があります。転職エージェントで市場の値付けを確認すると、今の環境に留まるべきかを客観的に判断できます。
まとめ:需要は本物。年収に変わるかは「実績の語り方」次第
最後に、この記事の要点を整理します。
- AI関連求人の割合は約2年で4倍。エンジニア全体も求人倍率10倍超の売り手市場が続く
- 採用は新卒・未経験の育成から中途経験者へシフト。経験者には採用予算が集中する追い風
- AIエンジニアの平均年収はITエンジニア全体を約150万円上回る(求人ボックス調べ)
- ただし「使える」だけでは上がらない。成果への変換・検証やリスク管理・実務経験との掛け算が条件
- AI関連の要件はまだ「歓迎」欄が中心。先に動いた人が得をする過渡期が続いている
生成AIを使えるエンジニアの需要は、データでも採用現場の実感でも、間違いなく伸びています。ただ、その需要を自分の年収に変えられるかは、実績を作り、伝わる形で語れるかにかかっています。今日の業務の中の小さなAI活用から、記録を始めてみてください。
AI時代に評価されるスキルの全体像と伸ばし方、生成AI時代のIT転職市場の全体像は、こちらの記事もあわせて読んでみてください。






その会社が良いかどうかは
他の選択肢を見ないと判断できません
人事の立場から言うと、比較対象を持たないまま決めている人が一番損をしています。
50歳未満/未経験は対象外
✓ リモート可否・フレックスなど細かい条件で検索できる
✓ 転職を決めていなくても登録できる
20代後半〜30代が中心
✓ 土曜1日で選考が終わる1Day選考会あり
✓ ITコンサル・メガベンチャーの求人が豊富

